けいはんな記念公園は人が集まるにぎわい、易経「45泽地翠」翠卦を画いた庭だった。けいはんな記念公園の東には木津川があり、木津川には多くの天井川が流れ込んでいる。JR奈良線が潜る天井川の風景は沢から地を見下ろす風景だと思い写真撮影に出かけた。玉川跨線橋、渋川跨線橋、天神川跨線橋、不動川トンネルとその周辺の写真を順に貼り付けた。本記事では翠卦が教える大会社における各役職者の悩みを書き出すことにした。
優秀な人を集め会社という組織を作るのは社長、その人柄、理念、理想、そして社風を見て応募者が集まる。社長には一般社員、ベテラン社員、部課長、そして会長までもが相談に訪れ、答えを求める。社長一人ではすべての相談に応じきれないため、一部は直属の部下である役員が相談に応じる。
社長は孤独なので、同じく社内で孤独な立場にいるベテラン社員と話が合うのだが、ベテラン社員の上下には部課長、一般社員がおり、彼らも社長との交流を望むので、ベテラン社員とだけ懇意にすれば、上下の者からベテラン社員は足を引っ張られ職場に居られなくなる。よって懇意にはできずお互い孤独の中にいる。しかし、社長は優秀なベテラン社員を見出し、応援し、会社の能力を底上げする役割を持つ。
一般社員は役員と通じる。役員もどのような人か知り尽くした部課長、ベテラン社員に会社の将来を託す気になれず、一般社員の中から将来を託せる人を探したがる。
しかし、一般社員は会社の基幹人と見なされていないので、役員が一般社員を抜擢することはない。一般社員は指導を受ける身なので役員に気さくに相談を持ち掛けることができる。良い社長の下で働きたいと願い、理想を持って入社した新入社員は誰しも自らの理想と現実の違いに戸惑い、訳がわからなくなってしまう。見上げるとベテラン社員は難しい仕事をうまく処理し成果を上げ続けている。部課長はいつも笑顔で楽しそうに仕事をしている。
上司や先輩との歴然たる実力差を見せつけられて泣きたくなる。そのような時に相談できるのは役員、指導を受ける立場なので、社内のだれからも咎められることはなく相談に応じてもらえる。未だ職場について知らず、自分自身の能力について知らないので憂いが起きるが、本来、悩む必要の無いことで悩んでいるだけで、職場に慣れ、自分ができることが判れば、組織の一員になれる。そのような時に、職場の雰囲気に飲まれ、背伸びして仕事ができるふりをし、無理に職場の中で居場所を作るようなことをすれば、たちどころに先輩に見抜かれ、あたふたとした行動を取ることになる。素直に仕事を教えてもらう謙虚さを持ち、積極的に学ぶようにすることが大切なのに、なかなか純粋に先輩に教えを請うことができないのが人である。
会社とは社員が一丸となり、会社が負う宿命に沿って仕事を行い、社会貢献を行う組織である。その原則から離れた行為は職場の規律を乱してしまう。休みたい者には有給休暇を取らせ、辞めたい者は辞めさせ、与えられた仕事を喜んで行う者だけで仕事を行うことで職場の規律は守られる。その原則が理解できない者は、突き詰めれば自らが自らを理解できていない者だ。自分は何がしたいのか、何ができるのか、この職場で成果を上げられるのか。自らの能力に不足があれば学習、努力にて補うことができるのか分析しなければならない。自分にできると判断すれば、その職場で頑張ると決心すれば良い。
できないと判断すれば転職すれば良い。生活維持や自らの経歴作りのためだけに、自らに向いていない仕事をすべきではない。人生は一回だけ、自分ができないこと、向いていないことを無理してまで続けるべきではない。失敗が許され、多くのことが学べる一般社員の期間は給料を頂いて実力を蓄える期間であり、容易に有給休暇が取れるので、自分と向き合うことができる。悩みは単純で入社した会社で働き続けることができるのか、できないのかその一点だけ、自らの目標を定めれば答えはすぐ出るのに、職場のそれぞれの立場の人から、いろいろな説教を受けるので頭が混乱し、感情にて頭が揺れ動き、自己防衛本能から小さなことで大騒ぎをしたくなるが、悩みは自分が自身のことを理解していないから、仕事ができないことで気迷いが生じているだけなので、大騒ぎは避けなければならない。
ベテラン社員となれば、社内の各人を観察し、自分はこの職場で何をすることができるのかを考え、将来、自分が居るべき場所を考え、その居るべき場所に向かい、誠実に、道徳に沿って仕事を行い、上司の肯定を得る努力を行うことになる。
私は取引先の大先輩から仕事は自分で作るものだと教えて頂いた。その大先輩は自分で仕事を作り、新たな部署を作られた。当然、その大先輩は常に社長を意識されていた。ベテラン社員が自らの目標を実現させるのは社長に認めてもらうしかない。
いずれにせよ、目標を作り、目標に向かって進み、成果を上げ続けておれば、いずれ引き上げてもらえ、居場所が与えられる。引き上げてもらうまで独走せず、分不相応な背伸びをせず、ただ誠意を持って会社組織と向き合うしかない。
客観的に分析し、自ら不正行為を行わず、誠意を持ち、公明正大に会社組織と向き合い、責任感を持ちノルマ以上の成果を上げ続け、会社に貢献し続けているのに、いつまで経っても引き上げてもらえず、居場所を与えてもらえないのであれば、会社を去れば良い。世間はいろいろな人を求めているので、社外に出れば必ず道は開ける。逆に会社側からすれば、自らの道を定め、不正行為を行わず、会社の中道を歩むベテラン社員がいれば、彼を引き上げても人事上の失敗となることは少ない。会社はベテラン社員に依存しているのは事実だから。
いつもニコニコしている部課長は一般社員及びベテラン社員の代表だが、部下が部課長の言うことを聞くかと言えばそうではない。部下を動かす必要上、多くの点で見て見ぬふりをしなければならない。上司である役員、社長とは距離が近いため、役員、社長はあまり部課長を評価しようとはしない。上司からも部下からも距離を置かれるも、社内で一番目立つ位置に居場所が与えられ、大きなノルマが課せられ、大きなリスクの中にいる。
決定権を持たされていないのに、自己判断、自己責任が押し付けられる。自己保身のためにいつもニコニコとしているが、実は大きな欲求不満を抱えており、楽しく仕事ができない。その立場は会長と同じなので、部課長が会長に相談に行けば、会長は話を聞いてくれる。
よって難問題を抱えてしまった時には会長に相談すれば難から逃れることができる。部課長の立場なので、会長へのプレゼント、問題解決の自己出費など少額でも許される。
役員は日夜問わず社長から猜疑心で見られる危うい位置にいる。部課長以下の社員は一見、従順な態度で接してくれるが、それぞれが自らの意思で動くので安心できない。報告も信用できず現場、最前線にての観察が欠かせない。
社長から限定的決定権を与えられ、部課長以下の社員を使い事業を発展させること、或いはピンチに陥った事業の再興、或いは新規事業の立ち上げ、或いは不採算部門の精算などが求められ、大成果を出すことを期待されているので落ち着かない。期待に応えることで自らの地位を固めることができるため、常に上司である社長と会長、部下である各社員に気を配り、言動は小心でなければならない。
新任役員に就任すれば経営陣の中では最下位でも、社内外において高い地位に就いたので、すぐに甘言、誘惑が浴びせられ、自己保身に陥り易く、或いは自己暴走する危険性がある。それらの難を逃れるため、私利私欲を捨て、徳を学び身や行動を正しくし、会社に奉仕する精神を持つことで役員の中で上昇を続けることができる。
社長は会社組織の中心にいる。自らの地位に頼って仕事をすればたちどころに陰で暴君だと噂され困難に陥る。役員時代から学んだ徳でもって仕事を行うことが求められるので、更に徳を学び身や行動を正しくし、中道を歩むことになる。会社の最高権力を握ったので腐敗しやすく、日々、自らの徳は不十分だと自分に言い聞かせ、徳を向上させ、自己研鑽を続けることになる。社長就任時は社員全員が緊張し、社員の中に助長する者がいないが、社長自らが少しでも腐敗すると、すぐに助長者が現れ、組織の隙間を狙い私利私欲に走られ、派閥作りがされ、組織が混乱し組織崩壊へと向かい始める。会社には歴代社長が採用した多数の優秀な人が居るので、その人たちに社長は正道を歩き続けていることを見せ、決して自らは混乱しないことが求められる。もし自らが混乱すると、役員がチャンスと見て派閥作りを行い、勢力拡大し、部長以下の従業員を従え社長の地位を略奪しようとする。
社長は常に社内に注意を払い続ける必要がある。徳を修めることで、自らは何もせず、役員の実力を認め、実力ある役員を使い、それぞれの役員に重大な任務を与え遂行させる。自らは理想や理念、会社の宿命、そしてものごとの道理や真理を社員に説き、全社員を引っ張り続けることになる。役員が社長の意思どおりに動けば会社組織は安泰で盤石なものになる。
会社組織の中で最も苦しい立場にいるのは会長。名誉職的な立ち位置にあるため、社内の人との関係が円滑にならなくなり、社員との食い違いが生じやすくなり、ちょっとした発言で非難され、悲嘆にくれやすくなる。更に追い打ちをかけるように社長、役員、部課長、ベテラン社員、一般社員の苦悩、憂い、悲しみを一手に引き受けることになる。自らの仕事を放棄したくなるほどに、泣きたくなるほどに全社員の悩みが集中する。それら悩みの収束に走り回ることになるが、会社組織は会社に付与された宿命に沿って回っているので、悲観せずとも部課長を使うことで解決が図れる。
会長の最大の仕事は、会社の最高職位にいる立場を使い、会社の歴史を後輩達につなぐこと。そして、優秀な部課長を次の役員へと育てることにある。
以上、易経、翠卦が教える会社組織を学んでみて、大いに隆盛している大会社であっても、楽な地位は無く、人と人との親和は少なく、特に多くのベテラン社員と社長職が最も孤独で、孤独な人ほど仕事をしているものだと思った。人は愛情を求め生きているが、組織維持のために、或いは上司の私利私欲にて冷たく扱われる人が出るのは避けられない。そのような立場におかれても謙虚に過ごせば会社組織から追い出されることはない。大会社が社内に神社を持ち、会社墓を大切にするのは社員に会社愛を感じてもらうためだと思った。