夢想国師が修行したと伝わる小楢山手前の低い山を借景とする庭園。枝垂桜の梢と梢の間に方丈の西北7.26㎞にある標高1713㎞の小楢山頂上が見えるのかどうか判別つかないが、小楢山頂上は富士山、南アルプス、御嶽山を直接遥拝できる遥拝地なので、小楢山の聖水が庭池に流れ込み、吉祥の亀島が泳いでいるように見せている。聖水の滝口傍には夢想国師を模した細長い白色を帯びた庭中心石が立っているので、その背後に小楢山があることを暗示している。庫裏の北側、御堂のような形をした建屋の屋根上に、もう一つの借景山がある。方丈の東北2.38㎞、目視できる標高942mの恵林寺山から流れ出たように見せる沢の瀧口が庭の東北側にある。方丈庭園に神の権現石と佛像石があったので、こちらの沢水は佛水と感じる。庭池の水は神水と佛水によって満たされているように見せているので、葉が少なくなり、空気が澄み、二つの借景山が明瞭に見える冬が一番美しいのだろう。寒くなればなるほど、雪が深くなればなるほどに美しさが際立つと思った。戦国時代を終わらせるために戦った武田信玄はこの庭に習い、日本国を造ろうとしたのではないだろうか。流れ込む神水と佛水で池水が満たされているように、日本は神水と佛水に囲まれ守られている。日本列島は亀島のように吉祥にあふれ、周辺国から美しい国だと賞賛される。そのような国造りを目指したように感じた。