1903年(明治36年)頃に作られた書院前庭園は天守に敬意を示している。1994年(平成6年)天守閣が木造で復元され、大木となったサワラ(イトヒバ)とのバランスが良くなっている。明治の商家の庭らしく水を流さない深い掘り込みにて枯山水の河に見立て、川底に比較的大きな丸い石をたくさん並べ水の流れに見せ、傍に大きな石を置き豪快な河としている。そして大きな雪見灯篭を置き、力と富を誇示している。庭に天が進む方向と逆方向に進む水を見せないことで天(明治天皇)に従う意味を持たせたのではないかと思うが、地面を深く掘り込むことで築山を高く見せ、サワラ(イトヒバ)を背高く育てることでエネルギッシュな庭になっている。この形の庭に共通する見苦しい点は維持管理のため枯山水の川底にセメントを塗り地底の気を遮断したこと。川底にセメントを使わず清水を流せば更に美しくなるはずだと思ってしまう。庭中心は須弥山のような築山にある石組で、そこから流れてきた枯水と、山のような掛川城から流れてきた枯水が石橋を潜った後に合流し下流へと進む情景が描かれている。密集したアカマツが踊っているように育っている。離れ座敷前庭園も同じ趣旨で作られ、枯山水の渓流情景が作られている。常緑樹が躍っている。皆が力と富を求める時代に踊った明治らしい庭だ。