以前、訪れた時、ナラガシワ、カエデが芽を出し、サクラの花びらが庭を覆っていた。アカガシなど常緑樹が厳冬期を乗り越えたばかりのように見えた。急斜面の山腹に曲輪を作り、地肌が見える崖面近く、建屋跡の南東に庭を作ったので、山裾の勢いが付加されている。庭を取り囲むようにヤブツバキ、ツツジが植えられている。北畠氏館跡庭園の中心石と同じく烏帽子を被ったようなスリムな石が庭中心石で、三尊石組になっている。中心石の左右、少し離れたところにスラリと立つ石、池手前側の三角に尖った石、いくつかの角張った石、それら石々の先端の高さが微妙に違うので緊張感ある。庭の端々に大きな石を据え、池を取り囲む石々と対峙させているので庭全体に緊張感がある。朝倉義景が作ったと伝わる一乗谷の3庭園と同じく黒系列の石に白苔が育っているので、雪、雨、冷風、寒日など厳しい天候ほどに庭が引き締まると思った。頭の角を天に向ける石と頭がずんぐりとした石を取り混ぜている。どちらかと言えばずんぐりとした石の方が多い。借景庭園なので背後の山とバランスを取っている。神の降臨を意識した祈りの庭ではあるが、擬人化した多くの石が個性を見せているので賑やかだ。細川高国が築庭したためか鉄砲が出現する以前の武将たちが戦場を望む姿に見える。緊張感の中に人間的な優しさがある。借景を生かすように背後の樹木を剪定し、背後にサツキ、ツツジで大刈込を作りリズムをつければ石々で擬人化した武将たちが動き出すように見えることだろう。