「39水山蹇」蹇卦
姉妹の喧嘩のような、いつまでも背を向き合わせ和合しようとしないのに、お互いが相手を必要とし、心の中で引き合う関係は易経「38火泽睽」睽卦。このような難儀な状態を続けていると、やがては路を失い前にも後ろにも進むことができなくなる。
まるで暴風雨で土石流が発生し、山中の河が閉塞し、悪い水がせき止められ湖が出来たような状態、行き場を失った水が発生する巨大水圧が、いずれは、せき止め部分を破壊し大災害を引き起こす。
睽卦の次の卦で、睽卦の伏卦、内部の動きを示す「39水山蹇」蹇卦はそのような山と水に挟まれ、前にも後ろにも進めなくなった危険な状況下での対処法と解決策を説く。
河道閉塞と関係ないが、一庫ダムにて作られた湖、知明湖の写真を添付した。
蹇卦には成語「騎虎難下」がある。危険を避けるため虎の背に乗ったが、降りるのは危険なので虎に乗り続けている。いかにして虎から降りるかを問う。
会社員に例えると社内で派閥抗争が発生している。身を守るため実力ある上司に付き従うことにしたが、恐ろしい上司で何時も落ち着けない。離れたいが離れることができない。虎の背に乗っておれば、誰もがにこやかに接してくれ、穏やかな情景を見続けることができるが、それは幾重もの危険と隣り合わせの中にある。
険しい山と流れない水に挟まれた、道の無い、前後左右に進めない危険な所に迷い込んだら、たとえ片方の足を引きずる状態にあっても歩き続けなければならない。
険しい山を避け、危険な水を避け、歩きやすい方向を見つけ、退避方向が合理的なのかを確認しながら、智恵と才能を使い、タイミングを見計らい、一貫性を持ち、解決に取り組むことになる。易経の四難卦は自力で脱出するしかない。蹇卦は引きずっていた足の萎縮が治れば火を水で消化するように一気に解決できる。
「騎虎難下」の答えは虎に肉を喰らわせて逃げるというような卑しい方法、戦って勝てるはずがない虎と戦うような無謀な方法、自己都合で虎に嘘をつき解決してはならないと説く。
虎は背中に乗せてくれ、背中にしがみつくことを許してくれた。虎の背中に乗せてもらうことで普通に経験できないことを経験し、普通に学べないことを学び、乗せてもらっていた安定期間、力を蓄えることができた。それらに感謝し、虎の立場、虎の気持ちになって考え、自分ができうる虎が悦ぶことを虎と話し合い、安全に下ろしてもらうことを討議し、何かの約束を結び下ろしてもらう。
その後、時間をかけて約束したことを果たし続ける。決してその場だけの解決を行わず、長期的観点に立ち解決すべきで、そのような解決ができた人が真に勇敢で、智恵ある人物、そのような大人になるべきだと説く。
前後左右に進めない困難に遭遇した場合、先ずは進むのを止め容易に脱出できる路を探すべき、助けてくれる実力者を探し、適時に立ち止まり脱出路を確認し、進むべき方向が違っていたなら、少し譲歩し、少し下がることで見える世界を広げる。歩きにくい路が続くが、歩き続けなければ災難や禍が降り注いでくるので歩かなければならない。争って勝てないと愚痴をこぼしていては自分の尊厳を失ってしまう。負ければ譲歩し、一歩下がればチャンスがやって来る。挫折、立ち上がることを繰り返すことで勇敢になれる。
組織において規則違反、命令違反、指令違反、社内慣習に反する行為、トップの意志に背くことが風潮になると、進むことができない組織になってしまう。そうなった場合、組織員は組織のトップに徳が備わっているのか、実力が有るのかを見定め、トップが有徳有力者であれば、トップの意向に誠の心で従い、困難と障害を排除し前進すべく、トップが示す光明の方向に向かって歩き始めることになる。
組織員は困難や障害に強引に突っ込んで行くのではなく、先ずは前進を止め、現実を見定め、智恵を練り、適当な時を見計らって才能を使い困難や障害を排除すべきで、少し進んだ後、路が合理的なのかを確認し、進む方向、困難を乗り越える方法や方式が適当なのかを確認し、行動を調整しタイミングを見計らって再び前進することになる。
前方に行き止まりとなる罠が仕掛けられていないか、進んでいるのは行き止まりの路ではないのかを観察し、一貫性を持って前進と停止を繰り返し、調整し続けることになる。トップに盲目的に従属し前進するのではなく、思い付きで冒険するのではなく、適時に止まり、自分の頭を使い、ものごとを冷静に分析し前進、停止を繰り返す。
停止時、自分に間違った行動が無かったか、考えが至らなかったところがなかったか、平常心でものごとを見ていたのか、足りないところがなかったかを検証し、改めるべきところは改め、補うべきところは補い、再び出発する。困難や障害から逃げるのではなく、困難や障害は自らを鍛錬するチャンスだと捉え、自己反省を繰り返すことで修徳が積める。歩いた路は曲がりくねったものになる。
蹇卦は解決できない困難はない。解決しようとしない人がいるだけだと教える。