入江泰吉旧居

崖上に植物を楽しむ庭が、崖下に山中の遊歩道のような庭がある。崖下の庭外側が水路で綺麗な水が爽やかに流れている。その水路に沿い、昭和の庭らしい黒色系の石で飛び石を並べている。庭にツバキが多い。侘助がピンクの花を咲かせていた。水路の連続音が心地よい。巨大ケヤキの老木とカエデの紅葉はすばらしいことだろう。玄関前の庭から崖下の庭へは階段を通る。階段の下には小さな石仏が二つ置かれ山野辺の道などを連想させる。庭に隣接するコンクリートで固めた水路、西側の空き地、フェンスが美観を落としているが、それでも山中の雰囲気がある崖下の庭の飛び石を伝い、順路に沿って階段を上り客間に戻る。変化の大きな山の中の散歩道となっている。庭を一回りすると山の中を歩いた気になる。(写真家)入江泰吉は被写体の気と心を一瞬で感じ取る感性を持ち、感じ取った気と心を写真作品に仕上げた方だ。季節ごとに異なる水のせせらぎ音を聞きながら、山中を歩くような庭にて春の鮮やかな若葉、夏の照り付ける太陽光と影、秋の真っ赤な紅葉、音が通り心まで冷え切る冬に咲くツバキにて感性を磨いたことだろう。ラカンマキ、イヌマキ、シュロなど切れ込んだ細長い葉。刻み込んだようなカエデの葉。葉の付け根が赤いモッコク、油が乗ったツバキの葉。美しい老木ケヤキの樹皮。樹木の葉や樹皮を見せる庭にて樹木を育てることは感性を磨くに適していたのだろう。