門に入り台スギを見上げると天守閣が迫ってくる。井戸へ向かうと小堀遠州好みの石をサツキで取り囲んだリンガ表現が目に入る。井戸付近ではシランが花を咲かせ、湿地のほとりに生えるショウブのような多年草、シダ、コケ、カエデの陰などで水場の雰囲気が作り出されている。井戸から水が湧き出し、沢飛石がある水場を抜け、通路に沿って設けられた枯山水の水路を通り流れ出るよう演出されている。枯山水の水路は溝に角石を充填することで作られている。広間の西南側の通路にはツバキ、ウツギ、センリョーなど多くの花木が植えら季節を楽しめるようになっている。広間から庭を眺めると掛川城の地下エネルギーが井戸から噴出し、水場を通り川となるドラマを感じ、季節の花や紅葉が楽しめる日本庭園だと思った。しかし、それぞれ近くに寄ってよく見るとサツキが取り囲んでいるのは石ではなく花草。本来サツキに取り囲まれるべき石が囲みから離れている。井戸に見えていたのは井戸の形にくり抜いた石、水は竹筒から灌がれる。優れたデザイン庭だが天守を心に取り込む真の井戸はなく、神佛の降臨石がない。政教分離の時代だからしかたがないのだろうが祈りを避けている。