永谷池の水が階段状の崖を通り、窪地の池に流れ込んでいる。
紅葉谷を通って来た水は観月橋を潜り、窪地の池に流れ込んでいる。
巨石群にある大瀧から落下した大量の水が観月橋を潜り、同じく窪地の池に流れ込んでいる。窪地にある池に排水用の川が無いので、水は地に吸い込まれて行くように見えるので、易経「45泽地翠」翠卦の姿になっている。
窪地の池近くに案山子を立て田の賑やかさを感じさせ、背の高い観月橋にて窪地をより深く見せている。うまく翠卦を表現したと思った。
前回は「44天风姤」姤卦にて出会いについて学んだ。人と人とが出遇った次には集まりが起きる、今回は翠卦の集まりについて学ぶことにした。同じ類の人が集まり群を成し、同じ職種を好んだ人が集まり群をなす、例えば軍は巨大な群れだが、中を見ると、士官は士官で群れをなし、下士官は下士官で群れをなし、兵は兵で群れを成している。軍という巨大な群れを運営するため、それぞれの役職者同士が小さな群れを作り情報交換やガス抜きを行い、巨大組織を効率よく運営している。
会社も同じ全体では大きな群れだが、役員同士で群れをなし、管理職同士で群れをなし、ベテラン同士で群れをなし、一般社員同士で群れをなすことで、効率よい会社運営がされている。
大きな組織の中にある多数の小さな群れは誰かが管理している訳ではないが、皆が組織人であることをわきまえているので、自然にそれぞれが頭と口を使い、自らの座る場所を確保し、群れの中で自らの役割を果たしている。
人は一人では無力なので群れに入りたがる。大きな群れに入る理由は、優れた将官、次官、優れた経営者などの下で働くこと、優秀な人に混じり指導を受け、自らの能力を向上させ、自らの人生を豊かにし、自らの生活を確保するためにある。大きな群れの中に作られた同じ立場の者が集まってできるリーダーなき小さな群れに入るのは、自らの居場所確保とスムースに仕事をするためだ。
軍隊や会社では優秀な者ばかりを集めてチームを作ることがある。目標に向かい短期的に結果を出すには適しているが、優秀な人は自尊心が強く、親和性の低い人が多いので、期間が少し長くなると評価、昇進をめぐる競い合いが起き、生産性が落ち、チームが成り立たなくなる。優秀な人が抜けた部署のレベルは瞬く間に低下するので、チームは優秀な人に多くの者がぶら下がっているのが健全な姿なのだろう。
従業員を追い込むだけの評価制度を導入した会社は、従業員同士の間に行き過ぎた競争が起き、疑心暗鬼が起き、職場が混沌とし、小さな群れが消滅し従業員の居場所がなくなる。利益追求のために評価制度を導入したはずなのに、会社レベルがダウンし、経営者のレベルがダウンし、利益が減少しがちとなる。
一番恐ろしいのは、チームリーダーが、特定の部下を生贄にしてセクシャルハラスメント、パワーハラスメントを行うこと。その逆に部下がチームリーダーに対し、セクシャルハラスメント、パワーハラスメントを行い、リーダーを排除することがある。こんなチームを真っ先に去るのは優秀な人。よって組織は優秀な人が去ったチームを精査する必要がある。優秀な人を引き続けるには筋を通し続ける必要がある。
翠卦は大組織が組織を束ねるため、神社建立し定期的に神事を行うこと、墓を建立し貢献者、物故者を祀り、定期的な祈念活動を行うことを勧める。この活動にて組織は規則正しい天の動き、神の意志にて回っていることを組織関係者に感じさせ、幹部、管理職、優秀な人が熱心に、慎んで、神事に参加している様子を皆に見せることで組織内外の関係者を感化できる。よって、その支出は、ケチってはならず、組織の財力を皆に見せなければならないと教える。
もともと会社従業員、下級公務員は上司から言われた通り、従順に黙って働き、仕事の中に楽しみを見つけ出すものである。それに対し、会社幹部、上級公務員は常にリスクとノルマを負わされ、楽しみが見いだしにくいので、仕事が停滞する恐れがある。群れの目標は幹部、上級公務員が楽しみながら働ける環境作りにあると教える。
映画の中で、中国では皇帝が、日本では将軍が、町民らと心を通わせる交流を行い、民の強い支持を得るシーンがある。藩主を含め上級武士の家の間取りは、上級武士が毎日座り執務を行う部屋から田畑が見渡せ、農民と目線を合わせ心の交流ができるようにしていた。現在の会社も会長、社長がベテラン従業員と心を通わせた交流を行い、従業員の支持を得ることは極めて重要なことだ。軍隊においては将官が下士官と心を通わせた交流を行うことで強軍を作ることができる。社長、会長がベテラン従業員を見下せば、たちどころに従業員は会社から逃げ出す。よって常に寄り添い続ける必要がある。会長、社長は創業者の理念と自社の宿命を説明し、全社員がそれに沿って仕事を行うようにすることで、社内反乱を防げ、思いは亨。
組織は常に危険や困難と隣り合わせ、それらを乗り越えるため全員への教育を行い、レベルアップに取り組み続ける必要がある。サーバー攻撃、政治的攻撃を受けやすいため、常に防衛を心掛けなければならないが、誰かと戦えば禍根を残すので、防衛のみに徹する必要が有る。
総じて、官僚機構の中にあっては次官、軍においては将官、会社にあっては会長、社長が才徳を備えていること。才徳を備えたトップを生み出し続けることが組織の最重要課題。才徳を備えたトップを輩出し続ければ派閥が発生せず、組織内闘争が起きない。
この庭は窪地に庭を作り、流れて来た水を集め、地に染み込んでいるように見せることで外部とは別空間の群れする場所に居ることを感じるようにしている。
庭の最高地、観月橋の末端には強い風に吹かれる少女を画く嵐像が一体置かれ、庭上空には嵐が吹くも、庭の中には風が吹いていないことを表現している。
つまり、日本国土は嵐が吹く国際社会とは別の世界で、日本の国土は日本民族のもの、そこに日本民族が集う場があり、日本民族は自らの国体を守るべきだと主張している。グローバル化に乗せられ日本が自らの尊厳を失わないように注意喚起している。すぐ近くに国立国会図書館がある地なので、日本民族の愛国心を育てるために作庭したのだと思った。
窪地にある庭に案山子を並べ、日本の原風景を見せている。よく考えた演出だと思った。この庭の中には絶対に裸婦像を置いてはならない。裸婦像を置けば生贄儀式を連想させてしまう。日本民族は神社での祭りを通し、血を嫌い、穢れを嫌い、生贄儀式を排除すべきことを習慣化させて来た。この優れた文化習慣にて組織内でセクシャルハラスメント、パワーハラスメントが起きにくいようにし、健全な組織作りを心掛けて来た。
日本人が心がけている「お互いの共通点を探し、違いを受け入れる」精神をもとに、自然災害の多い国土にて、群れを作り、お互い協力しながら歴史を重ねて来た。日本民族の優れた文化風習を守るべきことをこの庭は語っている。