北八ヶ岳坪庭自然園

標高2237mの北八ヶ岳ロープウエイ山上駅に坪庭と称される溶岩台地がある。いくばくかの土が堆積し、低木の高山植物が育っている。時計回り一周約30~40分の溶岩台地を散策することで、横岳、三ツ岳、縞枯山の山並み、それら山腹に育つモミ属のシラビソ、オオシラビソの縞枯れが楽しめる。近くの標高2480mの横岳まで登り蓼科山を眺めた。この高度ではモミ属樹木が大木とならず、一定周期で生え変わること、風の強さで一定方向にしか枝は伸びないが、幹が真っすぐ育つ努力をしていることに驚いた。ロープウエイで気軽に登れる横岳だが、標高が少し高いので山の怖さを感じる。伝統的な日本庭園は山が持つ生気を画いていることを実感した。標高2237m以上の広い溶岩台地に遊歩道を付けた自然園なので、見渡す限りに2300m以上の山々が連なり、雄大なものとなっている。標高2000m以上の高さにある雲は、偏西風で移動し続けるので、高速で山を乗り越える雲の移動がすぐ近くに見える。時には足元に雲の移動が見える。雲は留まることがなく、一刻一刻と風景を変化し続ける。雲が雨となり、水滴を山上に叩きつけることが雲の変化の極みということだろう。山上にある溶岩の自然園は刻々と変化する大自然を我々に見せつけている。風の力が雲を高速移動させ、容赦なき変化を自然園と山々に与え続けている。山上に有る、人力が及ばない力で出来上がった溶岩台地と、人力では防ぐことができない偏西風を見せることで、物事は強い力で変化し、離散することを見せている。地上において、このような離散する道理を見せる庭を造るのは容易ではないと思った。現在、世界は大きく変化し続けている。地上の庭に例え、安定生活の中において変化を予知することは難しいことを教えている。