黒さが目立つ緑泥岩の庭石にて「鉄は国家なり」の言葉に表現される力を信奉した明治時代らしい雰囲気が作られている。庭は二つの部分からなる。一つは天平倶楽部の建屋内から食事をしながら楽しむための部分で、斜面に多くの大きな緑泥岩を置き、裾に沢池を設けている。庭外側のエノキに寄生するヤドリギと満開の梅に目が奪われる。一乗谷朝倉氏遺跡の石組を連想した。もう一つは斜面を登ったところの平地部分で、東大寺大仏殿、御蓋山、花山など恵まれた借景を持つ「柿食へば鐘が鳴るなり法隆寺」の俳句を連想させる柿の古木、そして力を誇示するかのように大きな緑泥石をサークル状に組んだ天上池がある。回遊式の花木の多い庭なので見どころは多いが緑泥石をサークル状に組んだ天上池が正岡子規を偲ぶ庭の核心だと思った。山上にある澤なので易経に当てはめると「31澤山咸(たくざんかん)感じ応ずる」となり、若い男女の交わりのように先入観なく、見栄も欲もなく、素直な心で電撃的に、一瞬に相感し合う。正岡子規の俳句の世界を表現した池だと思った。