蘭亭曲水乃宴図に面する庭
蘭亭曲水乃宴図がある蘭亭南の庭。琵琶湖に近い寺なので池は琵琶湖といったところだろうか。庭に画かれた情景は当寺の伽藍が遥拝する先、東の伊吹山、北の鉾島神社の風景ではないだろうかと思い鑑賞したが、伊吹山は岩山ではない。鉾島は日本海に面し琵琶湖とつながっていない。よって庭に画かれた山は伊吹山でも鉾島でもない。答えを探すためにグーグル地図で当寺が聖地とする比叡山延暦寺の親鸞聖人旧跡・真盛上人修学之地を起点とし(飛騨山脈)槍ヶ岳頂上とを結んでみた。するとこの線は琵琶湖を跨ぎ、当寺の蘭亭と(住職の部屋)含山軒を通過し-(飛騨山脈)大木場ノ辻のピーク付近-(飛騨山脈)奥丸山頂上付近を通過して槍ヶ岳頂上に到達した。槍ヶ岳付近にはこの庭の三尊石と同じく槍ヶ岳(3180m)、大喰岳(3101m)、中岳(3084m)があり、当寺から槍ヶ岳方向を望んだと同じように3つの岳の高さが違うように3つの石の高さを違えて組んでいる。3つの石の後ろ側、渓谷対岸石は奥丸山(2439m)、大木場ノ辻(2232m)だと読んだ。つまり当寺の聖地、親鸞聖人旧跡を出発し、琵琶湖を超え槍ヶ岳に向かえば大木場ノ辻付近までは行けるが、深い峡谷に阻まれ、槍ヶ岳、大喰岳、中岳にはとても行けないこと、近づけないことを画いている。蘭亭の中から庭を鑑賞するとアカマツは幹だけを見せ、大木のキンモクセイも幹を強調し、スギ、イヌマキは蘭亭に面する部分の枝を払い、幹を強調し、ツバキも幹を強調した刈込とし、シュロは葉をごくわずか残し幹を見せている。アラカシは山の雰囲気を盛り立てるためにあるが、それぞれの樹木は幹を見せ、ものごとの本質を見誤るなと語っている。蘭亭曲水乃宴図の意味は曲水に酒盃を浮かべ、酒盃が流れ去るまでに漢詩を作れなければ罰酒を飲まなければならないのに、自ら進んで罰酒を飲む者がいること。酒は節度ある飲み方をすべきことを教えている。その部屋に向け樹木の幹を見せ、ものごとの本質を見誤るなと警告を発している。容易に近づくことができない聖地があることを教えている。遊興ごとを楽しむことは、筋が通せる人、ものごとの本質が見抜ける人、神佛に敬意が払える人にのみ許されることだと蘭亭曲水乃宴図と庭が教えている。賢人を養うための庭だ。