和歌山城 西之丸庭園

東照宮遥拝天守郭に包まれた大名庭園

庭を見渡し、目を引くのは3本の橋と鳶魚閣(えんぎょかく)。御橋廊下の中心線を西に伸ばすと(広島)錦帯橋の中央橋台に到達した。定期的な補修で美しさを継続し続けている錦帯橋を敬ってのことだろうか。小天守中心点と北北西の鳥取東照宮中心点を線で結ぶと線は鳶魚閣近くに架かる木橋に沿って通過する。鳥取東照宮の背後には鳥取城の天守櫓址(久松山)が控えているので、鳥取東照宮と鳥取城を敬う方向に木橋を架けている。反対方向は大天守と小天守に向かう方向だ。神の通り道となっているので神が遊ぶ庭の意をもたせている。グーグル航空地図では紅葉渓橋の方向が判読できなかったのが残念だが、鳶魚閣は清和天皇水尾山陵を遥拝する向きに建てられていた。ブッダガヤの大菩提寺中心点と(高野山)奥の院を線で結ぶと、内掘を利用した二つの池を通過するので、佛の池と言ったところだろうか。紅葉渓庭園と呼ばれている通り多くのモミジが植えられている。紅葉渓橋を深い谷に架けることで渓谷にいる雰囲気を出している。飛び石を地面から高く頭を出させることで奥深い山中にいる雰囲気を出している。築山から湧き出した水は渓谷を通り佛池に流れ込む。秋の紅葉のシーズンには落葉した赤い紅葉が川と池を赤く染めることだろう。戦国時代の血を洗い流し、赤く染まった川と佛池に供養の意を捧げる意図があるのだろう。 渓谷に流れる小川の水量は多くない。しかし渓谷は急こう配で、小川の両側に大きな石を多数配しているので深い谷の様相を表している。小川の底に黒い石を敷き詰め、多くの樹木で覆うことで葉の間からこぼれた太陽光線を抑え、水量が多いように見せている。加速をつけた水は池に向かい瀧のような勢いで轟々と流れ下っている。小さな黒石を濡らす渓流から庭全体で女性を画いていることが見て取れる。鳶魚閣近くに架かる木橋付近から紅葉渓橋方向を見上げると、瀧のように池に流れ込む水が清々しく、池を包み込む形から女性的な包み込んでくれる美しさを感じる。母親の胎内にいるような雰囲気を作っている。インドのヒンドゥー教寺院で見た、洞窟のような部屋の中央にシヴァ神のリンガを表現した石を置いたと同じ雰囲気があり、生命力にあふれている。築山上の聴松閣・水月軒跡からは急こう配の渓谷、二つの池風景を楽しめる。池に映る月を楽しむことができるようになっている。江戸時代は静かで暗かったので、茶室から出て見た池に映る月は心に滲みたことだろう。内掘り池に突き出す鳶魚閣は四角の御堂形状で、三面を真っ白な障子戸面としている。太陽や月の光を部屋の中に十分に取り込むと同時に、内堀池水面の波に反射した波打つ光を障子面に当てている。鳶魚閣に入り四畳半の部屋に座ると、障子は光の波動を楽しむスクリーンとなる。書き物、読書、思索に適していることだろう。内堀の水面近くの最も低い位置にある鳶魚閣で過ごす藩主の姿は、東照宮遥拝天守郭など城内で勤務している旗本ら役人から丸見えとなっている。藩主に仕える役人と藩主が一体になる大名庭園だ。