和歌山県公館(2)

「39水山蹇」蹇卦

歩けそうもない巨大な溶岩流浸食岩と渓谷が深山幽谷を感じさせる。溶岩流浸食岩を利用した険しい築山と、流れない渓谷底の水で、蹇卦を画いている。人はこのような場所に立たされると足が萎縮してしまい、激しく凹凸している岩の上を歩けなくなってしまう。しかし歩き進まなければ、次々と災難に襲われるので歩きやすい路を探し脱出するしかない。会社組織の内部に正常な命令系統に背反する風潮が生じ、足並み揃わない状態が続くと、派閥が発生しやすくなる。或いは出世や保身のために特定者のミスを叱責し、貶める発言を繰り返して悪い噂を作り、悪いレッテルを貼り、特定者を無視させる風潮を作る者が出て来る。そのような行為が多発する会社では、やがて上層部が営業現場、生産現場の実情を把握できなくなり、無駄な報告、無駄な会議が増え、健全な営業活動、現場作業が損なわれ、前後左右に進めない蹇卦の状態へと陥ってしまう。このような危険や困難に襲われた会社は正確な判断を下せる品行方正で忍耐力ある実力者を社長とすべきで、社長が正しい筋道を堅く守り、従業員を公平に扱い、一つの目標に向け従業員を導き、会社を時代に適応させ、経営力を向上させ、会社を危険と困難から脱却させなければならなくなる。蹇卦状態から脱出中の会社において一般社員が活躍できる場面は無い。会社が一般社員に求めているのは、与えられた仕事の範囲内で仕事を行い、学び、チャンスを待つこと。現場の仕事を完全に掌握しておらず、上司の指導、管理下で成果を出す一般社員が自己判断で行動すると返って会社の負担が増えてしまう。よって、会社は一般社員に自分で判断つかないことには手を付けないよう、軽率な行動はしないよう指導する。一般社員が軽率な行動をせず、職場に戻り報告すれば、上司は頭を使う人間だと大いに賞賛する。普段、一般社員を可愛がってくれる役員も、蹇卦の局面では一般社員が自己判断でした行為に対し、何の援護もしてくれない。ベテラン社員、軍隊においては下士官。現場の状況を熟知し、日々、確実に成果を上げている。戦場において最前線で兵を引き連れ指揮するのは下士官。会社が困難に陥ったのはベテラン社員のせいではない。彼らは純粋に有徳有力の社長や将官を尊敬し、社長や将官を補佐すると堅く心に決めている。しかし会社が蹇卦の状態にあるとき、社長は全社員からの圧力の底におり、更に外部からの圧力で圧迫され、自己能力不足を悩んでいる。社長とベテラン社員との間にいるのは、一見すると自己保身に走っているように見える部課長、危険と困難で弱気になっている役員がおり、直接交流することが阻まれる。ベテラン社員が社長と共に困難な道を歩き、社長を補佐し続ける態度を貫けば、社内の皆から賞賛される。会社の危機的困難において、部課長は会社のために奔走はするが、部課長が社長、役員と接すると自らも落とし穴の中に落ち込んでしまうので、すぐに自身の部や課を守るために戻って来る。部下たちは会社のために活動したがっているが、部課長が積極的に動くと、部下のベテラン社員、一般社員が積極的に出動し、彼らも落とし穴に落ちてしまう。部課長は部下の動きが止められなくなることを恐れ、或いは部下の犠牲を恐れ、難しい局面の安定化に努め、部下と自身を守ろうとする。軍隊における前線部隊指揮官の尉官は、部下の犠牲をできるだけ押さえるため、準備が整うまで動こうとしない。役員は自身の部下を率い危険や困難に立ち向かう力を与えられていない。次から次へと難題が降りかかって来る蹇卦の局面では、下にいる部課長は役員と会うのを避ける。上にいる社長は困難の中で沈んでいる。このような条件下で活動すればリスクが生じ、良くない展開へと進む。よって時期が来るまで状況を見守るしかない。時期が来れば、上にいる社長、下にいる部下の力を利用し、統一戦線を張り、上下の援助にて危険に向かい、解決に向かうことになる。社長は全従業員の中心にて、危険と困難のど真ん中にいる。そして全社員の苦難を一身に引き受け、全社員が落ち込んでいる落とし穴の底にて巨大圧力を受けている。その圧力の中で情報を集め、分析し、問題の本質を掴もうとあがいている。問題発生者の立場や気持ちになって考え、問題発生者と討議し解決方式を出さなければならない。全社員が社長の発言を待っているので、解決方法、方式が決まれば、その合理的な内容を全社員に伝え、前進と停止を繰り返し、適時に考え、行動を修正し解決へ向けて進むことになる。ベテラン社員が忠心で追従してくれ、難を静めるためにあちこちに走ってくれている。困難を共有するベテラン社員と共に、時を見て、黙って解決を図る。逆境の中でこそ人の真情が明らかになり、一緒に歩いてくれる人が増える。会長は社長から敬服されているが、立場上、自らが先頭に立ち解決を図ることはできない。先頭に立ち前進すれば、困難がより行き詰まるので、主動できない。全社員から大人物だと見られているので、多くの社員からの協力申し出があるが、社長を助けてあげて下さいと回答せざるを得ない。蹇卦において最も実力を発揮するのは社長と部課長なので、会長は部課長と社長との心を合わせ、両者を補助すると共に、会社内部のコミュニケーションを向上させることに努める。社長と部課長との一体化が進み、社内コミュニケーションが向上して社員を一団とすれば、大成果が上がり、一気に危険と困難が消除する。このようにして解決すれば、全社員の危機に備える意識が向上し、ものごとを安易に試しでやる風潮がなくなり、十分に準備してから行動するようになる。この庭は紀州徳川家の歴代藩主が紀州東照宮へ参拝する際に使った屋敷跡の庭なので、組織人は危機意識を持って勤めに励むべきことを教えている。もし生涯にわたり蹇卦の状況下、つまり虎の背中から降りることができず、虎の背中に乗ったまま暮らし続けることにでもなれば、苦痛な生活から逃れることはできない。よって、組織人は常に小心に注意深く物事を観察し、慎重に小心に行動すると共に、いつでも自らの才能を発揮できるように心を快適に伸び伸びとさせておくことを心掛けなければならない。それを感じさせる庭だ。