湯殿跡庭園(一乗谷朝倉氏遺跡)(2)

庭中心の三尊石はスリムで小さい。三尊石の右隣には緩やかな鏡面を持つ立石、手前には頭が尖った立石と権現石、左側には権現石のような立石が並び山脈を表現している。立石を並べて作った山脈の中央に階段状の枯瀧がある。形状から築庭時には山水を流し池に注いでいたと見た。池には独立した亀島があり権現石が座している。池の護岸石は前傾で亀島にお辞儀している。聖なる山から流入した聖水で満たされた池、聖なる山々を表現した石々、神が宿る形の権現石が三尊石を取り囲んでいる。総括すると信仰対象となる形の石を集めて組み、池の中に信仰対象となる独立した亀島を設け権現石を置き、聖水が流れる瀧、聖水を蓄え流す池から構成されている。これほどまで神を意識した庭は少ないと思った。今は、小さく育てたヤブツバキ、ツツジが庭の中にあるだけで、植栽少なく、建屋が無いので遥拝先が不明な、庭骨格の石組みだけから成る庭となっているが、男性神が宿ると思える立石やズングリした陽を表現する石々が、陰の池を取り囲んでいる。気品あふれる神々しい石、瀧、池、亀島で構成された庭なので、降臨した神々の内なる声を聞くことを目的としている。この庭が輝くのは神の啓示のような稲妻が走り、落雷音が山に響く時だと思う。神と対話し、神の啓示を聞き、稲妻のように決断を行い、改革革新を誓う庭だと思う。祖先神を敬い、神の啓示を基に活動する日本人の心を凝縮した庭を持ちながらも、織田信長に滅ぼされた朝倉義景。庭を残した織田信長が偲ばれる。