入口入ってすぐ、四角いプール型の池がある。山に囲まれた庭にプール型池があるので、天、山、地、沢を見せる力強い日本庭園の基本構成と同じだ。次のガーデンルームには人物像、馬の頭が並べてある。ブルータス(BRUTUS)像の眼光が鋭いこと、その隣の酒飲み女(BACCHANTE)像の陽気さが印象深かった。京都府立植物園のバラ園には多数の裸婦像が立てられていたが、人物、動物像を並べたところが日本庭園との違いを感じる。水の庭のガーデンルームには泉のように水が流れ出る盆型噴水があり、より日本庭園との違いを感じる。しかし振り返えると聖山になりそうな形の山が控えていて、日本風景の中の外国式庭園だと思った。たくさんのバラが植えられたガーデンルーム中心にも丸型プールのような噴水がある。庭の中に泉と水場が多いが、水場を小川でつないでいない点も違いを感じた。木の枠にバラをからませ、プランターに針金で作った枠を乗せバラをからませ育てている。太陽光を平面で受け止める庭であり、葉の色が薄草緑の樹木を多く育てているので、イチョウの葉も軽く感じる。大刈り込みにより四角に囲まれたガーデンルームが特徴で、天井の無い部屋の中にいる感じが良く出ている。太陽光が降り注ぐ明るい世界の中に、太陽光を吸収する大刈り込みの壁があり、太陽光が降り注ぐ明るい世界の中に居るのに、暗い部屋の中に居るような陰陽を同居させた点が優れていると思った。やはりメインは甘い香りを漂わせるバラのガーデンルーム。花言葉の愛情を思い起こさせる。この庭の目的は、恋人同士が散策し恋を育てる。園内を子供たちが走り回り、その姿を見て親が喜ぶ。中高年夫婦が散策し花を楽しむなど愛を育む庭だ。近代日本庭園、公園も同じ路線上にあるので似ていると思った。周囲が山に囲まれた恵まれた地点にあり、そこに自然の動きに連動しないガーデンルームがあり、ガーデンルームを風が吹き抜けている。動かない家の形をした庭上空を太陽、月が通り抜けている。易経「56火山旅(かざんりょ)」がこの庭にふさわしいように思う。地上に降りてくることのない太陽、月を旅人にたとえ、旅先に降り立つことをせず、旅先の人々と真の親和をしない旅人の姿、旅人が行える限界を見せている。平地に作られたヨーロッパの宮殿前に広がる幾何学模様庭園は地表、泉の上に風を通す形となっているので、易経「37風火家人(ふうかかじん)」が当てはまると思う。火が燃えると風が起こる。煙立つところに人家あり、家の中心は火が燃えるところ。火により食事と暖がとれ和が生まれる。組織内のそれぞれの立場の者が、その立場にふさわしい言動を取れば火が燃え上がり、風が起きるように一気に発展する。そのためには内部を整え、組織人の和を生む必要がある。ヨーロッパ宮殿に幾何学模様の庭が多いのは、組織人に和を求めるためだと思う。日本は山が多く起伏に満ちているので、日本で幾何学模様庭を作ると易経「56火山旅」を表現した庭に見えやすいのだろう。